ウツボ

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真核生物上界 動物界 後生動物亜界 脊索動物門 脊椎動物亜門 顎口上綱 条鰭綱 新鰭亜綱
 カライワシ上目 ウナギ目 ウツボ亜目 ウツボ科 ウツボ亜科 ウツボ属


全長: 80cm


学名: Gymnothorax kidako


英名: Brutal moray (Brutal = 残忍な moray = ウツボ)
Moray eel (eel = うなぎ)

漢字名: 鱓


地方名: キダコ(神奈川県三崎、熊本県天草、長崎県)
ナダ(神奈川県)
キツネ(新潟県)
キダカ、トウキダカ(鹿児島県)

琉球列島を除く、南日本、台湾に分布する。
沿岸の岩礁域や転石帯に生息する。

形はウナギに似るが側扁し、胸びれ、腹びれがない。
黄褐色の地に黒褐色の横縞がある。
白色の臀びれ縁辺をもつことで近似種のミナミウツボと区別できる。
口は大きく、歯が鋭い。脊椎骨数は136〜143。

日中は岩礁のすき間に体を入れ、頭だけを出している。
夜行性なので夜間タコ類や小魚などを捕食する。
昼間でも好物のタコを求めて泳ぐことがあり、その姿をダイビング中によく見かける。

ウツボが夜間活動できるのは嗅覚が発達しているからである。
ウツボには感じるための側線が不完全で、また夜間は光も無いため嗅覚にたよるのである。
ウツボの鼻孔はほかの魚と異なっていて、肉質の管が前方の開口部に出ている。
鼻孔内には毛状突起が波打っている。
普通魚は泳ぐことにより水を鼻孔内に通すが、ウツボはポンプのようにして水を出し入れしている。

闘争心が強く、英名にもあるように残忍なイメージがある。
プリニウスの「博物記」によるとアウグストゥス帝政下ではウツボの池に奴隷を放り込んで処刑したという話が出ている。
ウツボを撫でている写真が有るが、この人はウツボの性質をよく知っている人なので出来るが、危険を感じると身を翻して噛み付くので、絶対にまねをしてはいけない。歯はカミソリのように鋭い。

繁殖期は夏で午後遅くに雌雄が尾をゆるくからませ、突然腹部を押し付け合わせて放卵・放精し、すぐに離れる。

和名の由来は、「空洞」(ウツホラ)に住む魚という意味で、転じてウツホラ→ウツホ→ウツボとなったという説と、矢を入れる靭(ウツボ)という太い筒に形が似ていることによるという説がある。
この靭(ウツボ)は「空」(ウツホ)が濁音になった語と言われているが、筒の内側ががらんどうにうつろになっていることによる。
学名の"kadako"(キダコ)は地方名からきている。
貝原益軒の著した生物学書「大和本草」には「キダコ」「ヒダカ」として記載がある。

ウツボと言えばよく話題になるのが食べれるかどうかだ。
肉質は良いが小骨が多いので、普通は食用にされない。しかし、日本の多くの地方で食べる習慣があり、主に黒潮の当たっている半島の先端の地方でのウツボ食は有名である。
食べ方は背開きにして背骨と頭を取り除き、塩味を付けて生乾しにした干物がほとんどで、それを切って火であぶり、脂のしたたるものを熱いうちに食べるのがおいしい。
皮下脂肪が発達しており、その脂が魚類としては非常に良質で、消化吸収が良いので妊産婦にも勧められているという話もある。
紀州地方では、ウツボを短冊に切って醤油と砂糖で甘辛く煮たものを「うつぼ小明石煮」と名付け名物となっている。
皮はなめして草履、ハンドバッグなどの材料にされたこともある。

ウツボはタコが好きで、タコはイセエビが好きである。そこでイセエビはウツボと一つの穴に同居し、身の安全を守っている。ウツボはイセエビを狙ってやってくるタコの足を鋭い歯で食いちぎって食べるという訳である。
小さいウツボは大きなタコに返り討ちに合うこともある。タコの吸盤で鰓孔を塞がれ死ぬことがあるからである。但し、ウツボのようにうろこを持たず、ヌルヌルした粘液を分泌して皮膚を保護している魚には、タコの吸盤もあまり役に立たない場合が多い。
また、タコの墨はウツボの嗅覚を一時的に麻痺させられてしまうことも分かっている。タコとウツボの戦いは互角というところか。

釣りではイシダイ・クエ釣りの外道として釣れる。仕掛けを切られることが多いので釣りでは嫌われ者である。